有名私立大学を中心に、その大学附属の中高一貫校を要する、とある地方の学園都市。
Aさんはその都市にある会社に長年勤めており、担当者として毎日、会社の営業車で市内を回っていた。
その日もAさんはいつものように、取引先への納品のため会社の車を運転していた。
いつもの配送ルートを通り、朝から晩まで常に渋滞している某私立大学の間の抜け道に入るため、路地を左折しようとしていた。
これから授業なのか、大学生達が路地を左折するために停車しているAさんの車の横を途切れなく歩いている。
しばらく待っているが、その日は特に数が多く、なかなか曲がることができないでいた。
「まあ、まだお客さんところまでは時間に余裕があるしな」と気長に人通りが途切れるのを待っていたAさんは、突然襲ってきた衝撃と大きな音に思わず悲鳴を上げた。
驚いたAさんではあったが、直ぐに冷静さをとり戻すと、ハザードを出して車を降りて一体何があったのかを確認した。
すると、車の左側、ちょうど助手席の当たりが大きくへこみ、近くには自転車と高齢の男性が倒れているのが見えた。
おそらくは、自転車が車にぶつかって倒れこんだのであろう。
「この男、前を見てないのか…」と思いつつも、Aさんは直ぐに警察に連絡し、救急車を呼ぶ手続きをとった。
その後、やってきた警察に事情を説明しながら、困ったことになったと考えていた。
後日、警察から、高齢男性が「自分こそが被害者。あの車が突然左折してきたせいでぶつかった。」と話していると連絡があった。
目撃者に証言を呼びかける看板を設置する予定ではあるが、とりあえず現時点では自転車であるあちらが被害者、という扱いになっているらしい。
業務中の事故だったため、会社にも相談をして対応を検討したところ、早めに証拠を出して、虚偽主張を覆そうという話になった。
幸いにも会社が契約していた保険会社の担当者が有能だったらしく、事故からまだ数日だというのに、Aさんが運転していた車と相手の自転車の衝突部分の撮影は既に終えていた。
さらに相手方の怪我の状況や、実況検分調書はまだ作成されていなかったのでその記載する予定の内容確認まで済ませていた。
ここまで材料がそろっているのなら、事故鑑定によって双方の移動速度やぶつかり方を導き出すのはそう難しくはない。
写真で判別できる事故の損傷具合、その中でも塗装面のずれている方向が大きな手掛かりとなった。
車が左折して自転車にぶつかったというのであれば、できるはずの方向に傷はなく、車の後方から前方方向に塗装が剥げて傷ができていた。
これは、傷を作る原因が、車の後方から前方に向かってぶつかっていることを示している。
つまり、自転車に対して車がぶつかっていれば反対方向に傷ができているはずであり、相手の主張が虚偽である証明になる。
この鑑定結果を元に示談交渉を行い、虚偽の主張をして自らの罪を誤魔化そうとしたこともあり、少し大目の金額で示談が成立することとなった。
【参考情報】
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