Aさんの趣味はバイクでのツーリングだ。
普段の生活でもバイクを使うが、休日にバイクで遠出して見慣れない風景を眺めるのが好きだった。
だが、今はツーリングに出かけられるような状態ではなかった。
なぜならば、今現在、Aさんは両足にギプスをはめ、松葉杖をついている状態なのだから。
こんなことになったのは、さかのぼること2週間程前に原因がある。
その日、Aさんは久しぶりの連休を使い、バイクでいつもよりも遠くまでツーリングに出かけていた。
天気は快晴。
交通量の多い街中を離れ、見晴らしのよい郊外の道を気分良く走っていた。
直線道路は遥か彼方まで延びており、他にも同士と思われるツーリストや、ドライブを楽しんでいる車が数台遠目に見える。
信号もなく、思わずスピードを出したくなる道ではあったが、Aさんはスピードを出すのが好きなのではなく、バイクで走りながら風景を楽しむことが好きだったため、法定速度でのんびりとバイクを走らせていた。
そんなとき、Aさんは、後ろから重低音の排気音を大音量で響かせながら、一台の車が猛スピードで近づいてくるのに気付いた。
車はAさんのバイクを追い越そうと右隣の車線に移ると、直ぐに元の車線、Aさんの前に戻ろうとしたようだった。
車が左に車体を向けた瞬間、Aさんは思わず「やばい」と呟いていた。
それは車が車線を変更する一瞬のことだったが、車が左に車線を変更したときの角度と速度から、バイクの前輪と車体の左後部がぶつかるとわかったのだ。
直後、Aさんの判断の通り、車の車体はAさんのバイクの前輪を弾き飛ばし、Aさんはその衝撃でバイクと共に引き倒され、道路を転がることになったのだった。
Aさんは意識を失っていたため、事故直後にどのようなやり取りがあったのかは知らない。
目を覚ましたときは病院のベッドで、両足骨折と数ヶ所の裂傷、打撲など、決して軽くない怪我ではあったが命に別状はないという説明を受けた。
そして事故から日が経ち、ある程度落ち着いてきたとき、警察から事故について事情を聴かれることがあった。
その時、車の運転者が「Aさんが猛スピードで車を追い越そうとしてぶつかってきた」と話していることを知ったのだった。
当然、Aさんはぶつかってきたのも猛スピードを出していたのも相手の車のほうだ、と主張した。
しかし、その時の目撃者はおらず、監視カメラなどもあの道路にはない。
警察が検証するには時間がかかるということだった。
特に今すぐ結論を出す必要性もないし、と考えたAさんだったが、その考えを打ち砕くように、相手からAさんに対して治療費、車の修理代、そして休業補償を請求する連絡が入った。
なんでも、相手が言うには「事故の原因はAさん側にあり、こちらは被害者であるから全ての損害はAさんが負担するべきで、それを直ぐにでも支払え」という一方的で事実を無視した言動であった。
これに憤慨したAさんは、警察の捜査の結果を待たずに自分で事故の真実を明らかにする必要があると考え、事故鑑定を行うことにしたのであった。
事故鑑定自体はスムーズに進行した。
双方の事故車両が現存していた上、警察のほうで保存していたため、その車体を確認して鑑定に使うことができたからである。
その結果、車体の破損方向や塗料の剥がれ方から、相手の車がAさんのバイクの後方から衝突したことが導き出された。
この主張とは異なる事実を元に交渉した結果、Aさんの主張が認められる形で決着した。
【参考情報】
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