主婦のAさんは、自家用車で郊外のショッピングセンターに買い物に出かけた帰り道に交通事故に遭遇した。
信号のある交差点で、Aさんの車の側面にBさんが運転するファミリーカーが衝突したのである。
Aさんの車は衝撃で弾き飛ばされ、交差点の脇のガードレールにぶつかり停止した。
Bさんは軽症であったが、Aさんは頭部を負傷し、救急車で病院に搬送されたものの、意識を取り戻すことなく、2日後に息を引き取った。
警察の実況見分とBさんへの聞き取り捜査により、Aさんが信号を無視して交差点に進入し、青信号で走行してきたBさんと衝突したとされた。
これは、事故を目撃した人物がいなかったこと、当事者であるAさんが死亡したことにより、もう一人の当事者であるBさんの証言が根拠となったためである。
さて、この状況に対してAさんの遺族は当然のことながら異議を申し立てた。
Bさんに過失があるのならば、死人に口なしと自分に都合の良いように証言をしている可能性があるからだ。
しかし、感情で納得できないからといっても警察は取り合わない。
そこで、交通事故鑑定により物理的に事故状況を解明することになった。
まず、警察の実況見分による車両の衝突後の位置と、双方の車の損壊状況から、Bさんの証言による走行速度が正しいかどうかを検証することとなった。
Bさんの証言によれば、制限速度50Km/hのところを40Km/hから45Km/h程度で走行していたという。
しかし、検証の結果、車の破損状況と衝突後のAさんの車の移動距離から導き出されたBさんの車の速度は、軽く時速80Kmを超えていることが判明した。
さらに、Aさんの車についた傷の痕跡から、Aさんの車は最大限に見積もっても時速30Km未満しか出ていなかったことも判った。
Aさんが走行していた車線は、直線方向であれば見通しが良く、右折レーンを入れて3車線の道路で幅も十分あり、30Km/h未満で走行していたとは考えにくい。
Bさんは交差点に入る直前でAさんの車を見つけ、ブレーキを踏んだと証言していたが、Aさんの車が時速30Km未満で交差点に進入した場合、衝突地点に達する前にBさんの車はもっと前に出ているため、Bさんの車の側面にAさんの車が衝突する形になるはず。
このことから、Aさんの車は交差点の信号で直前まで停車しており、青信号になったため車を発進させて速度を上げていた途中である可能性が考えられた。
さらに、路面にブレーキ痕があったため、Bさんがブレーキを踏んだことは間違いないだろうが、そうなるとブレーキを踏んだ上で衝突時に80Km/hを超える速度を出していたことになる。
状況を鑑みて算出された衝突前のBさんの走行速度は、制限速度を大幅に超える時速110Kmであった。
これらの検証結果から、信号が赤から青に変わり交差点に入ったAさんの車に、Bさんの車が突っ込んだ結果の事故であるとの結論となった。
【参考情報】
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