交通事故にあった場合、当事者の間でどちらに事故の原因があったのかによって、損害賠償責任を分担するのが一般的である。
いわゆる過失割合、またはその後の損害金の分担までを含めて過失相殺といわれ、人対車であれば0:100もありえなくはないが、車対車でよほどのことがなければ、50:50から事故原因に責任があるほうが割合を増やされることになる。
事故によって発生した車両の修理費や身体の治療費、休業保証金などの損害賠償の金額を、この過失割合に応じて分担請求するわけだが、この割合に納得がいかないと訴えるケースも少なくない。
Aさんも、そんな人物の一人である。
Aさんがあった事故とその後の状況は以下のようになる。
いつも利用するスーパーに自家用車で出かけたときのこと。
住宅街のあまり広くない道を走行し交差点に差し掛かったとき、横から走行してきたワンボックスカーと衝突した。
不幸中の幸いにも、Aさんにもぶつかってきたワンボックスを運転していたBさんにも怪我はなかったものの、双方の車は大きく損壊した。
後日、改めて修理費の負担割合などを話し合うことで、とりあえずその場は合意した。
そして、数日後。
Bさんの保険会社が提示してきたのは、事故の原因はAさん側にあり、Bさんが被害者である。
よって、事故の過失割合は9:1でAさんが修理費の9割を分担するように、という要求であった。
Aさんが訴え出たのは、この過失割合があまりにも一方的な主張であり、Bさんにも相応の瑕疵はあるのだから、適切な割合での示談を要望するためである。
事故現場の道路は、Bさん側が優先道路であることから、Aさん側がある程度多く負担せざるを得ないことはわかるが、それでも多くて7:3くらいだろう、とAさんは考えていたのだ。
ともかく、不満だからといって根拠がなければ合意に至ることはない。
そのため、示談交渉の材料として事故鑑定を行い、第三者の目から、Bさんにもそれなりの事故となる要因があったことを証明する材料を得る運びとなったのだった。
Aさんが過失割合を減らすよう主張するための材料にしようと考えていたのは、Bさんの車の走行速度である。
ぶつかったときの状況は動転していてそこまで詳しくは覚えていないものの、Bさんが相当なスピードでぶつかってきたという印象があったからだ。
実際、ぶつかった直後に壊れた車を見て、お互いに怪我がなかったのが奇跡だと思ったほどである。
事故車両の写真はどちらのものも問題なく用意できた。
現物車両はAさんのほうは修理せず残っていたが、Bさんのほうは既に修理されているそうなので、Aさんの車の現物の衝突痕跡と、Bさんの車の写真の衝突痕跡から、衝突時の速度を割り出すことになった。
まず、事故状況で、衝突した後にお互いの車がどのように移動して停車していたのか、その状況から双方の車体の破損から見て取れる変形量、これらを根拠として、どの位の衝突エネルギーが発生したのかを計算する。
そして、お互いの車体の重量などから、そのエネルギーを生み出すために必要となる速度を算出した。
その結果、時速40Kmで走行していたAさんの車の左側前面、ちょうど助手席の前あたりに、時速60KmでBさんが突っ込んでいったという鑑定結果となった。
この道路の制限速度は30Km/hである。
Aさんも速度を超過してしまっているが、Bさんのほうがさらに20Km/hも速度をオーバーしているため、Bさんに事故原因が多大にあるといえるだろう。
この鑑定結果を元に示談交渉した結果、6:4での過失割合で合意する結果となった。
【参考情報】
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