閑静な住宅街の交差点内における交通死亡事故であるが、発生時刻は交通量のほとんどない深夜11時頃であり、近所で音を聞いたという目撃者が1人いるだけであった。
被害者のA氏と加害者のB氏は交差点内で出会いがしらに衝突し、二輪車を運転していたA氏は死亡している。
B氏の証言にもとづく実況見分調書によれば、「青信号で発進した際、バイクを運転していたA氏が赤信号を無視して交差点に進入してきた」と主張しているが、果たしてどちらの信号が赤信号であったのか。
本件の争点は、事故発生時刻の信号が赤信号であったか否かである。
そこで、神奈川県警察本部交通規制課に当該信号機の信号サイクルの情報公開請求を行った。
その結果、当該信号機はコンピュータ制御していないため資料が存在しないが、当該信号機の西側にある信号機(〇〇〇〇駅前入口交差点)と連動しているとの回答があった。
まず、前提として両車両の衝突時の速度を求めるため、B氏の指示説明した内容から、工学鑑定によって速度を計算すると、A氏バイク速度は35.1km/hであり、B氏乗用車は23.3km/hであった。
そして、B氏の発進地点から衝突地点までの所要時間は5秒になると推定された。
次に目撃者の証言であるが、当該交差点付近にある自宅車庫へ自車を入庫した際に事故の衝突音を聞いたとのことであるが、その日は、当該交差点を右折(前方にA氏のバイクは目撃していない)した後、2軒目右側にある自宅車庫へ後進入庫するため停車した際、バックミラー越しにB氏の車が、当該交差点に停車中であり、発進してこないことを確認して車庫入れをしている。
目撃者の自認書をとるために、車庫入れを再現し、衝突音を聞いた時刻までを3回計測した結果、平均49秒であった。
そうすると、目撃者が車庫入れの際、バックミラーで確認したB氏車両が交差点で停車していた際の時刻と、B氏の供述する時刻は共通時刻となる。
さらに衝突音を聞いた時刻と、発進したB氏車両が衝突した時刻も共通時刻となる。
以上から、B氏車両の移動時間5秒を差し引くと、約44秒間、当該交差点で停車を継続していることが分る。
次に信号サイクル表に照らし合わせると、B氏の44秒後の発進時の信号サイクルは、赤信号の始まり位置であり、A氏バイクは、(〇〇〇〇駅前入口交差点)から当該交差点の青信号が連動して走行できることが分り、この信号時間帯を走行して衝突に至っている。
この信号サイクルは、当該事故の目撃者情報とも整合する。
仮にB氏の信号サイクルに照らし合わせた場合、(〇〇〇〇駅前入口交差点)から当該交差点の180m間の赤信号を無視して走行しなければ起こりえないことであり、目撃者証言とも矛盾する。
よって、事故の態様はB氏が44秒間(青信号19秒間も含む)にわたる停車状態は確実であり、何らかの理由で青信号を徒過して慌てて発進した状態が赤信号と推察された。
【参考情報】
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